「フリーライドスキーを始めるために、どんな用具が必要か?」という問いに極端な答え方をすると、「道具はなんでもOK」となります。なぜなら、その道具なりのフリーライディングができて楽しめれば、それがフリーライドといえるからです。
今のようにゲレンデ整備が整っていなかった時代は、用具も今のように細分化されていなかったので、GSスキー(大回転用)でパウダー滑走したりして楽しんでいました。雪質や斜面状況に滑り手側が合わせて、技術を駆使して滑るしかなかったので、今思えば全員がフリーライドスキーヤーだったといえるかもしれません。
でも、フリーライドスキー向けの専用マテリアルが用意されている現代においては、その恩恵を享受しない手はありません。
まずスキーですが、センター幅は100mm前後のスキーがおすすめです。よく滑るスキー場のコース状況など、環境に応じてウエスト幅を微調整しましょう。ひとつ言えるのは、幅広=パウダー用という概念は捨て去ることが大切です。
スキーのタイプとしては、それぞれの技量や今までのスキーキャリアによって、好みに合うものを選びましょう。レース経験のある方は、より高いスピードでの安定性やエッジグリップ力を求める傾向が強いため、メタルラミネートタイプを選ぶことをおすすめします。基礎スキー経験者には、メタルラミネートタイプにこだわらず、サイドカーブがある程度強めの操作性に富んだモデルがおすすめとなります。どちらもスキーの太さが良い意味でルーズさを生み出し、ズレと切れをコントロールできるため、遊びの領域が一気に広がります。
ATOMIC/BENT CHETLER 100
パウダーからグルーミング、パーク、そしてコブなどの不整地斜面までこなすマルチプレーヤー。重量も軽く操作性抜群なので初めてフリーライドに挑戦する方にもおすすめの一台。
SALOMON/QST 98
新たにダブルサイドウォールテクノロジーを採用し、足元のエッジグリップや振動吸収力を強化したモデル。ツインローカーモデルながらカービング性能が非常に高いので、ゲレンデまわりで楽しむ方に最適です。
FACTION/PRODIGY2.0
足元はしっかりしているがトップとテールはしなやかに仕上がっており、地形を使った遊びが得意なオールマウンテンスキー。欧米ではベストセラーの人気モデルとなっています。遊び方はあなた次第。どんな使い方にも対応してくれる懐の深いスキーです。
ブーツは、今現在使っているブーツに不満がなければ、そのままでも構わないでしょう。ただし、レース用のフレックス値150以上のブーツでは楽しめる幅が限定されてしまうかもしれません。フリーライドを車に例えれば、同じレースでもサーキットでのレースではなくラリーのような感覚です。整地されたグルーミングばかりではなく、不整地もあれば、パウダーもあり、パークも、斜面ののり面までもが遊びの対象となるからです。アルペンレース用のブーツ以外であれば問題なく使えるでしょう。もちろんフリーライド系のブーツは足首が柔軟に使えてタメが作れるので、雪質や斜面変化にすばやく対応が利き、足裏が雪面に近くて安定性が高いのでおすすめです。

DALBELLO/
KRYPTON 130 T.I .ID
エキスパートスキーヤーならハードチャージングできるしっかりしたフレックスのブーツがおすすめ。短時間のハイクアップにも対応できるTECH インサート仕様。フリーライドコンペなどに対応したモデルです。

FT /
DROP KICK PRO
モーグル、ハーフパイプ、ジブなどフリースタイルならお任せ。熱成型可能なシェル&インナーで快適性にも優れています。低重心で足裏感覚に優れており、ずらしを意識したスキー操作が可能です。
ビンディングは、将来的にバックカントリーを視野に入れているのであれば、サロモンやアトミックの「SHIFT」やマーカー「DUKE PT」などのツアリングもできるモデルを選んでおくとよいかもしれません。ですが、まずはアルペンモデルのセパレートタイプであれば問題ありません。特にパークでも遊んでみたいという方にはスタンドハイト(ビンディング装着時の雪面からブーツソールまでの距離)が短いモデルがおすすめとなります。またビンディングの取付位置でも乗り味が変化するので、店舗スタッフと相談のうえで取付されることを強くおすすめいたします。

SALOMON/
STH2 WTR 13
スタンドハイトが低重心のため、スライド系の操作がしやすくランディング時の安定性も高いモデル。フリーライドコンペでの使用率の高い信頼のビンディングです。

MARKER/
GRIFON 13 ID
スウィングウェイトが軽く十分な保持力を備えたフリーライドのスタンダードビンディング。
フリーライドでもっとも必要なことは、道具ではなく、スキー場の中の地形を使って当て込んでみたり、スプレーを上げてみたりと、いろいろな動きを楽しんでみるマインドです。まずはセンター幅100mm前後のスキーを手に入れ、自由なマインドでスキー場で遊んで見れば、スキーの楽しさが大きく広がるに違いありません。
(秋田店 小山内春人)