トレーニングレポートvol.3 石井スポーツアルピニスト基金

2019-05-07

4月中旬、山梨県と長野県にまたがる「甲斐駒ヶ岳黒戸尾根」にて、モンブラン登山に向けたトレーニングを行いました。

 

【1日目】

竹宇神社(甲斐駒ヶ岳神社)駐車場に8時集合。

 

今回の講師は以下社内ガイド
・山岳ガイド 角谷 道弘(Mt.石井スポーツ神戸三宮店)
・山岳ガイド 佐藤 祐樹(Mt.石井スポーツ松本店)
・山岳ガイド 奥田 仁一(Mt.石井スポーツ大阪本店)

 

そして、地元在住の国際ガイド棚橋氏の4名で向かいます。
前回、西穂に参加いただいた今井ガイドと同様、棚橋ガイドも実際にモンブランに同行していただく予定です。

 

神社で各自参拝をして出発。お天気は快晴で、ペース早く歩くとかなり暑く汗が出ます。冬ではなく、春の山になったことを実感しました。

 

登りはじめ1時間くらいは全く雪はなく夏山と同様ですが、しばらくする雪解けの水が登山道を泥沼化し、靴やズボンのすそがドロドロになりました。

 

途中、崖になったところで、ムンター(※)での吊り下ろし、引き上げシステムのトレーニングを行いました。

 



登行を再開すると、登山道に凍った雪が結構出始め、アイゼンを装着。


刀利天狗直下あたりから、アンザイレン(※)し、鎖場(※)やはしごの個所で中間支点をとりながら行動したり、ビレイ(※)を入れながら素早く安全確保する訓練を続けながら、長い長い黒戸尾根七丈小屋にようやくたどり着きました。

 


【2日目】

 

小屋で用意していただいた朝弁当を食べて、5時過ぎ出発。

 

昨日と同様メンバー同士でアンザイレン(※)して行動。最初は風が強かったのですが、2ピッチ目くらいから弱まりました。


天気も予想より崩れず、富士山も見えました。

 

穏やかな稜線上を順調に登行し甲斐駒頂上に着きました。写真撮影を手早く済ませ、早々に下山にかかります。

 

小屋にデポした(※)荷物を回収し、ところどころ難所ではビレイ(※)を入れ慎重に下ります。

 

登りで利用した崖で、懸垂下降からの3分の1引き上げを訓練後、下山を再開。
駐車場に降り立った時には足元はドロドロでした…。

 

 

 


※ムンター
ムンターヒッチ。ビレイデバイスがなくてもカラビナ1枚でビレイや下降ができるなど万能なロープワークと言える。
別名ハーフクローブヒッチ、半マスト結び、イタリアンヒッチ。

 

※アンザイレン
二人以上が相互確保のためにザイルで体を結びあうこと。片方が墜落したときに、他方がザイルを使って墜落を食い止める。

 

※鎖場
縦走路などで、険しい岩場などに、安全のために鎖が取り付けられている場所。

 

※ビレイ
確保。墜落を防ぐために、ロープなどを使って安全手段を講じること。

 

※デポした
ザックやスキーなどの荷物を一時置いておくこと。

 

 

メンバー所感

 

横平充雅

三回目となる実技講習は、三大急登の一つ甲斐駒ヶ岳(黒戸尾根)、傾斜もさる事ながら行動時間も長く、とても登りごたえのある山でした。気温も高く発汗量も多くなるのが予想されたことと、攣り防止のために普段より多めに水分とミネラル類の摂取をしたことで、若干の攣りはあったものの士気が低下することなく踏破できたことは、八ヶ岳の教訓を活かすことができたと実感した。

 

1日目は竹宇駒ケ岳神社から七丈小屋まで行動。その間の笹ノ平分岐周辺において、滑落した仲間を引き上げる要領、刃渡りを越えた付近からアンザイレンしながらのコンテ歩行を練習しました。引き上げは、経験したこともありシステムの構築は問題なく実施することができました。保有する最少の器材で作成する要領も併せて再確認することができました。
コンテ歩行では中間支点を取り、場所によって相手を確保しながら登る要領を練習しました。自然物や人工物を積極的に利用した確保は今までも経験が少なかったので、実際にやってみたことで安全性と有効性を確認することができ、自分の引き出しも増やすこともできました。今後のトレーニング、本番でも危険だと少しでも不安を感じたら積極的にアンザイレンをして安全確保をするべきだと思いました。

 

2日目の行程は七丈小屋から山頂、下山。スタートからコンテ歩行で進み、危険個所では1日目に指導いただいたことを活かし、適所で積極的に確保をとり山頂を目指しました。山頂で角谷ガイドに「あの山は何?」と聞かれ全て答えることができなかった。自分の登る山以外も、周辺の山々を掌握して現在地が分かるように地形判読もできていなければならない。まだまだやること、できることが山積みだと痛感した。
下山途中、笹ノ平で懸垂下降、再度引き上げ練習を2グループに分かれ実施した。懸垂下降は経験の差はあったものの、引き上げ要領も前日と比べ全般的にスムーズにできていたのではないかと思う。しかし、各人1回ずつの練習だったのでしっかりと復習して、次回のトレーニングではさらにスムーズにできるように習熟しておかなければならない。また、トレーニング最後に奥田ガイドから与えられた宿題も、確実にできるようにして次回に臨みたい。

 

全体としての反省
2日目、準備が整わず出発予定時刻に出発できなかった。前日にできる準備やロープを束ねる技術等々、時間短縮を図れるところはまだまだあるはずだ。皆が自分の立場、危機感をもっと自覚し準備、行動しなくてはならない。国内トレーニングも3回目が終わり残りあと2回。ガイドの方も仰っているが時間が足りない。足りないが、教えてもらったことを全て理解し習得して活かさなければ、掲げている「自立した登山者」に到底近づくことができないと思うので、日々の空いた時間でしっかりと反復演練して身に着けていくことが必要である。

 
 

沓脱彩子

今回のトレーニングをとおして身をもって感じたことは、ある程度の潜在的な危険がある登山を行うときは、チームワークが何より大切だということだ。
チームは、2人のときもあれば3人以上のときもあるが、一挙手一投足が自分はもちろんパートナーの生死を分かつことがあり得る。
互いの安全性を高めるためには、技術や体力を向上させることはもちろん、互いに強固な信頼関係を構築することが求められる。
今回はメンバー同士でザイルを結び、自らどのように行動するか決めることがあったので、アンザイレンすることの意味を考えていた。このロープ一本が命綱になることもあれば、その逆になってしまうこともある。その重みを、ずっしりと感じた。
そして、甲斐駒ヶ岳での二日間では、自分の甘さを深く反省した。前回教わったことができなかったり、同じことを複数回注意されたりと、「自立した登山者」になるためにやるべきことがまだまだできていない。
自分だけではなく、一緒に山に登るメンバーの安全のためにも、さらにいっそう気合いを入れて、1日1日を大切に過ごし次回のトレーニングの日を迎えたい。

 

 

宮下雪乃

今回のトレーニングは2日間とも天気が良くとてもよかったです。
甲斐駒ヶ岳では、引き上げ訓練や二人組でのアンザイレンのコンテ歩行などを行いました。引き上げ訓練では大人の男性を女性が引き上げるのはとても大変でした。
体にロープを巻き付け全身を使って引き上げなければいけませんでした。一つ一つの作業を素早くできるようにしなければいけないと感じました。
アンザイレンのコンテ歩行では、危険なところでは自分と相手の間に必ず一つは中間支点を取っておくこと、切り株や岩に引っ掛けるだけでも支点の役割をすることなどを学ぶことができました。角谷さんに教えていただい山小屋に連絡をし登山道の情報を聞くことや、すれ違った人に道の状態を聞くということを今後は行っていきたいと思いました。

 

反省点
喘息の影響で呼吸が苦しくなってしまい、途中で行動を止めてしまい迷惑をかけてしまいました。もう少し体調管理をしっかりとしていきたいと思います。
西穂高岳で教えていただいたことが今回できてなかった事が多くありました。ロープワークなどはまだまだ練習が足りないと感じました。
暇な時間があったらロープワークやカラビナの練習をしたいと思います。また、頂上から見える山の名前や尾根の名前なども勉強が足りなかったです。
自分自身すべてのことにまだまだ練習や勉強が足りないと実感しました。これから日々トレーニングいはげんでいきたいと思います。

 

 

榛葉都

西穂高岳のトレーニングでは、エイトノットさえも素早くできず、ロープワークでの技術向上、さらには、歩幅が狭い分みんなの歩調について行くための体力U Pの必要性を強く感じた。今回のトレーニングまでの1ヶ月、エイトノットと長いロープを束ねる練習を重ね、階段や坂道をダッシュするトレーニングを取り入れて改善を図った。ただ、残雪期の日本三大急登の黒戸尾根のトレーニングということで、かなりの不安を持って当日を迎えた。
実際には体力的には改善が図られたと感じたものの、一番大事な「安全に素早く上り下りできる」ための技術と知識、経験値がまだまだ全然足りないということをここでも痛感した。エイトノットは基本の基本、ビレイするためのクローブヒッチ、ムンターヒッチ、ガルダーヒッチ、マッシャー結びなどなど、どこでどの結び方をするのかを分かっている必要がある。ビレイデバイスも持っているだけでは全く意味がなく、どこでどう使うかを想定して、練習して行くべきだった。
地形や装備品から、何が必要となりそうなのかを予めイメージし、それに対応できるような知識を入れて臨むことはトレーニングを受ける身として当たり前だったと強く反省した。
今回、トレーニングではビレイしながら登る方法を何度も学んだ。上り下りする地形を見ながら、どこでロープを出してコンテニュアス歩行して安全確保をするか。そして、単なるコンテ歩行ではどちらかが滑落すればつられてもう1人も落ちてしまう。常に先見性を持って、自分もしくはパートナーが落ちた時、どのくらいの力がかかって、どう落下してしまうかを意識して、どこを歩き、どこにビレイを取るべきか、上下交代してスタカットで登るべきか、安全で素早く上り下りできるよう、判断できる知識と経験の引き出しを増やしていかなければならないと実感した。
そのためにも言われたことを確実に自分のものにし、数少ないトレーニングの中での体験を一つも無駄にしないという気持ちで臨まなければいけない。
GWでもメンバーとともに懸垂下降の練習を行う予定であり、教えて頂いた技術と知識を頭と体に叩き込み、次回のトレーニングに臨みたい。

 

 

石橋遥

僕が今回の甲斐駒ヶ岳でのトレーニングで最も意識したことは「自分たちで安全の確保」をすることです。今までの八ヶ岳や西穂高岳でのトレーニングから何気なく付けてきたロープについて、なぜそのロープを付けるのかと考えさせられました。自分たちで地形や積雪の有無などを考慮し、メンバー同士で相談してロープを付けたり、ビレイを取ったりして安全を確保しなければならないはずなのに、今までのトレーニングではガイドの皆さんに言われるままにロープを付けて登っているだけだったのだと感じました。ロープを付けること以外のこともガイドの方々に言われるままに動いてきました。しかし、自分たちが目指すのはガイドの方々に安全を確保してもらうガイド登山ではなく、自分たち自身で安全の確保をはじめとした全てのことが出来るようになることです。ガイドの方々に教えて頂いた技術や知識を活かして、自分たちで考えて行動する登山者になるにはどうすれば良いかをこの甲斐駒ヶ岳で改めて実感しました。
また2日目にはリーダーとして登らせてもらいましたが、結果として自分のことで精一杯の状態になり、チームに指示が出せるような状態ではありませんでした。チームの状態を把握し指示を出すためには、まずは自分が完璧な状態で余裕を持てるとこが必要であると感じました。これはリーダーに関わらず安全に、楽しく登るためには必要な力であると思います。ロープを素早く正確に結ぶことや正しい安全確保ができていること、常に周囲の状態を把握できている事が余裕があることにつながっていくのだと感じました。
自分たちがどうなりたいのかをしっかりと考え、そのために必要な能力を身につけることが、今後残り2回のトレーニングとモンブラン登山で自分たちがどのような登山ができるのかに繋がってくると思いました。

 

 

西野尚美

早くも3回の国内トレーニングを終え、講師陣からは「言いたいことは100ほどある」と言われてしまうくらいまだまだ未熟であることを痛感しました。しかし、今回のトレーニングで繰り返しのロープ練習、中間支点をとりながらのコンテ歩行などを訓練させてもらい、やっと実践を通じての技術を習得する一歩を踏み出せた気がします。
過去2回のトレーニングでは、今までに自分がやったことのない技術に戸惑い、なかなか自分のものにできませんでした。繰り返しにより、少しずつではありますが、一つ一つの行動の意味、ロープの結び方の意味、その使用方法、道具の意味を理解しつつあります。
半年で自立した登山者になることはとても難しいことだと思います。時間も機会も足りないを思いますが、学ぶ機会を与えられていることは自分の中でとても大きな意味を持っています。
モンブランがゴールではないという講師陣の言葉が印象に残っています。この先なるべく長く、ずっと登山をしていきたいと思っていますので、時間をかけて、確実に習得していきたいと思います。
また、かねてより行ってみたいと思っていた黒戸尾根に残雪の季節に行くことができ、感慨深いものがありました。
知らない場所を知っていくことは楽しいです。
今度は季節を変えてまた行ってみたいと思います。

 

 

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