テント泊の基礎

山でテント泊を楽しむ

山でテントに泊まると、風の流れや虫の声、樹々から漏れる日の光、大地に寝る感覚と、一層自然との距離が近くなります。
一方で自然との距離が近いということは、自然の猛威とも近いので、悪天候の備えや、気温に応じた準備など、より綿密な準備が必要になります。

ここでは、自然を身近に感じたい皆様に、テント泊の基礎知識と工夫をお伝えします。

<テント泊の基礎 目次>

テント選びのポイント

ポイント1:使用人数

テントはそれぞれ収容人数に見合った大きさで設計されています。主に何人で使用するのか考えて選びます。

収容人数別テントの底面サイズ
サイズ 1人用 1~2人用 2~3人用 3~4人用 4人用
タテ ~90 100~ 130~ 165~ 210~
ヨコ 200~210 200~210 200~210 200~210 200~220

※メーカー・モデルにより異なる。

ポイント2:山行スタイル

①ベースキャンプスタイル(テント場に荷物を置いて行動するスタイル)

参加人数+1人を基準に選びましょう。
広い前室を持つテントを選ぶと、靴・水を置くことが出来るので、室内を広く使えて快適です。悪天候時の停滞するときのストレスも少ないのでお勧めです。

②縦走登山スタイル

設営・撤収が素早くできる、ポール2本構成のシンプルで軽量コンパクトなテントが最適です。
一方、収容人数と同数で宿泊するためには、テント内の整理や、調理時の共同作業に経験と工夫が必要になります。縦走登山でテント泊をすることはワンランク上の経験・知識が求められます。

ポイント3 テントのタイプ

シングルウォールタイプ

防水透湿生地1枚で構成され、ポールをスリーブに通すだけで素早く設営が出来るので、ヒマラヤの登攀や国内の冬期登攀で積極的に使用されます。

ダブルウォールタイプ

防水性を持つフライシートと通気性を持つテント本体構成され、悪天時に室内に雨が吹き込みにくいのと、靴・水を外に置けるので、室内が広く使えて快適です。

ポイント4 設営のスタイル

自立型

ポールを入れると自立するので、シンプルで設営に手間がかからない。移動が素早くできる。
(製品のほとんどがこのタイプ)

非自立型

ポールの本数を減らし、ペグでテンションをかけて設営するタイプと、トレッキングポールを兼用するタイプに大別されます。様々な工夫で軽量化を図り、軽量だけれども、居住空間が広いタイプなど、デザインが豊富で個性的なテントが多いのが特徴です。

テント泊を快適にするグッズ

ボトムシート

ぬかるんだり、濡れた地面に直接テントを設営すると、テント内に湿気が入ったり、フロアが汚れてしまうので、ボトムシートを用意すると快適です。テントの穴あき防止にもなります。

タープ

仲間とテントの外でくつろぐスペースを確保したり、雨天時の停滞、テント撤収に威力を発揮します。登山用のコンパクトなタイプがおすすめ。

感染症予防のテント泊装備の提案

「仲間と同じ釜の飯を食べて、夜語らい、明日登る山を共に夢見る。」

素晴らしいテント泊山行ですが、今、テント泊の醍醐味を味わうためには、少しの我慢と工夫が必要です。

ポイント

・お互い向かい合って会話・食事をしない。
・密空間を共有しない。

感染症予防のテント泊スタイル①

パーソナルテント活用する

・テント場のスペースを取らないように 設営しましょう。(図参照)
・予約の必要なテント場も増えるので、事前の情報収集も大切です。

感染症予防のテント泊スタイル②

フリーズドライ食品を上手に使う

お湯を沸かすだけで調理が出来るので、軽量クッカー・ストーブで大丈夫です。

※概算ですがパーソナルテントにしても、1人約400g程度の重量増で済みます。

共有テント泊装備 パーソナルテント泊装備
テント MSRエリクサー3 2660 パイネG-LIGHTテント1-2人 1320
コンロ プリムスウルトラスパイダー 167 プリムスP-115 57
クッカー エバニューチタンクッカー3・2 210 エバニューチタンマグポット500 75
ガスボンベ 通常ガス消費70g×3人×調理回数2=420g
250Tカートリッジ2個必要
740 簡易ガス消費30g×3人×調理回数2=180g
便利なので、IP-110カートリッジ1個とした
203
1人分重量 1259 1人分重量 1655
パーソナルテントとした1人追加重量 396

シュラフ(寝袋)の選び方

選び方ポイント1 使用する場所の温度を推測する

標高の高いところに行くと、気温が低いことは経験的に誰もが知っています。おおよそ100m上がるごとに気温は0.6℃下がるので、1000mで約6℃と覚えておくとテント場の気温が麓の気象観測点の最低気温・最高気温を参考におおよそ推測できます。この温度の推測からシュラフのスペックを決めると良いでしょう。

選び方ポイント2 中綿の素材の特徴を知る

シュラフの中綿の素材には主にダウンと化繊を使用したモデルがあります。重量比の保温性はずいぶんと差がなくなりましたが、やはりダウンがすぐれていて、同じ重量であれば、収納も小さくなります。一方化繊綿は濡れても保温性が維持できることや、乾きが早く手入れが簡単なのが特徴です。

シュラフ 選択チャート

シュラフ選択のアドバイス

はじめてシュラフを購入するのであれば、スリーシーズンをお勧めします。保温力としては、夏山であれば3000mクラスから北海道の高山帯でも十分です。低山で使うときは、ジッパーを開けて掛布団のように使うと快適です。中級山岳の冬山でも、ダウンジャケット・パンツを併用すれば可能です。忘れてはならないことは必ずマットを使うことです。たとえオールシーズンを使用しても、マットなしでは夏山でも背面からの冷えと地面のゴツゴツ感で安眠できません。シュラフ本来の性能を発揮するためにはマットが実は最重要なのです。

シュラフカバー

シュラフカバーの役目⇒防水と保温性の向上

激しい雨でテントに浸水したり、寒気の流入で気温が急降下するような過酷な状況下で、シュラフを濡れから守り、縫い目からの暖気の消失を防いでくれます。日常的にテントの内側が結露して、シュラフの足元が濡れることも多いので、寝袋とセットで持っていくことをお勧めします。

マット

マットはテント泊の必携品です。いくら優秀なシュラフでも、地面からの冷気と小石などのゴツゴツ感を防ぐことは出来ません。

EVA(発泡ウレタン)素材のクローズドセルマット

クローズドセルマットはメンテナンスフリーで断熱性も優れていますが、断熱性の高いマットは嵩張るのが欠点です。

エアーマット

エアーマットは寝心地もよく、嵩張らない点がすぐれていますが、穴があく危険性があります。
近年、エアーマットに化繊綿やダウンを封入したものが製品化されており、保温性も向上してきました。

ストーブ・クッカー類の選び方

テント泊では食事も自分たちで作るので、ストーブ・クッカーなどの調理器具と食料の携行が必要です。ストーブは大きく分けて3タイプ。クッカーも大きく分けて、3タイプに分かれます。それぞれのタイプの特徴を理解して自分に最適な組み合わせを選びましょう。

※初めてテントで調理をするときは、フリーズドライ食品がおすすめ!

フリーズドライ食品はお湯を沸かすだけで出来るものも多く、燃料の節約と調理にかける時間の節約になり、テント生活の時間に余裕が生まれます。特に朝の時間の節約は大事です。くわえて重量の軽減にもなり、登山に余裕が生まれます。テント泊の経験を積むにつれて、創意工夫の光る山めしにトライしましょう。

ストーブのタイプ

3本ゴトク

軽量でコンパクトですが、十分な火力を備えています。日帰りのティータイム・非常用に便利です。ライト&ファーストスタイルで攻める人たちも積極的に使います。

4本ゴトク

ラーメンなど、煮込む料理には、防風性、安定感に優れる4本 ゴトクを選びましょう。多くの方はこのタイプを選ぶスタンダードタイプです。

分離型

多人数チームで大量にご飯を炊く、鍋を囲む時や、長時間の煮込み、フライパンで豪快な料理を楽しむ時にはゴトクの安定性が高い、本体とガスが分離したタイプが便利です。

クッカーのタイプ

クッカーには深さの有る縦型(1~3人まで)と浅型(主に4人用以上)があります。素材はアルミが主流ですが、チタン製も軽量で少人数用に人気があります。登山用のクッカーはボンベ・ストーブヘッドとサイズの異なるクッカーを上手くスタッキングできるように設計されているのが特徴です。

1~2人タイプ

小型ガスカートリッジとストーブヘッドが丁度入る。

2~3人用タイプ

レギュラーサイズガスカートリッジとストーブヘッドが丁度入る。

4人用以上

多人数のご飯の炊さんやカレー・鍋料理に使える。
※多くは2個組で料理とごはんを炊くなど、役割分けをして多人数分を一度に調理が出来ます。
※持ち運びの便利なフライパン・ケトルもあります。

テント設営の基礎

1.テント指定地に到着したら、キャンプの申請と幕営料を納めます。

2.設営場所選び(場所は先着順なので、余裕のある計画が必要)

・雨が降ると水の通り道や、水溜まりにならない場所
・風を避ける場所
・落石のない場所

3.整地 (こまめに石を取り除いて快適に)

4.設営(風向きに注意!入口を風下にする)

・悪天時のテント設営は、ザックからテントだけを出して、ザック等はフライシートかシートにくるんで濡らさないようにする。
・テント設営後本体に荷物を入れて、フライシートをかけて設営終了。
・雨の多い時期は、別にシート類を持参すると便利。

テント内は整理整頓に努めましょう

テント内は荷物を広げるには狭い空間です。テント入口の方向にあわせて、荷物を置く場所を決めておくと快適に過ごすことが出来ます。下の図は一例ですが、入り口付近に靴と水・炊事道具を置くのが定石です。工夫としてはザックから物を出し入れするのは大掛かりになるので、個人の食器などの小物類を入れる手提げ付きのスタッフサックを持っていくと便利です。

テントの撤収

1.起床すぐにシュラフを畳んで、朝食の用意

①コンロに火をつけてテント内を暖めて、コーヒー・紅茶で水分摂取を行いながら、天候・今日の行程確認と食事の段取りを行ないます。

②食事後小物の整理とマットを畳み、おおよそのパッキングを済ませた後、テントの外に出ます。

2.テント撤収

①フライシートは頂点をつかみ、△の形に折りたたんで頂点から丸める。

②本体は底部をあわせて同じく△を作り、さらに長方形になるように折りたたんで、底部から丸めます。
底部をあわせるメリット
・撤収時にウエアが汚れない
・ベンチレーターから空気が抜けやすく、スタッフサックに収納しやすい

③悪天時はテント内でテント以外のパッキングを全て行い、雨具着用後、靴を履いて外にでて、テント撤収。テントの水をよく切って、収納袋に入れ、他の物を濡らさないようにビニール袋に入れてパッキングします。

実践技術 ペグワーク

工夫1

テントの四隅のペグループに50cm程度の細引き(ケブラー素材などの高張力ナイロンがおすすめ)をつけておきます。

土中に石がゴロゴロで、ペグが全部入らないことがよくありますが、ペグにループを巻き付けて固定できます。

あまりにもペグの打ち込みが浅いときは、5K位の石を見つけて石に巻き付けると、しっかり固定できます。

工夫2

張り綱の自在をテント側に付けて、末端はループにしておく。
※風が強くてペグから張綱が外れるのを防ぐことが出来ます。
※土中に小石が多くて、ペグが刺さらないときに、ペグにループをガースヒッチで固定して、ペグごと石で押さえつけると大丈夫です。

工夫3

強風で張綱だけでは「飛びそう!」な時
※補助ロープをテントの上から押えるように張って補強しましょう。ヒマラヤでも使う技です。

いかがでしたか?

一つテント泊といっても「たくさんの知識や経験が必要だな」と感じられたと思います。

中には「ちょっとハードルが・・・」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。でも、「百聞は一見に如かず」です。はじめは近くの公園でテントだけ張ってみる。まずトライをしてみましょう。近頃は日帰りでキャンプを楽しめる施設も増えてきました。テント泊気分を味わいに行くだけでも、どんどんとスキルが上がります。

よし、山にがんばっていくぞと思われた方は、登山口から2~3時間で到着できるところで、山小屋が近くにある所を選びましょう。例えば、立山の雷鳥キャンプ場は室堂ターミナルから1時間で到着します。正面に立山がそびえ、「さ、テントを立てたら登りにおいで!」と語りかけてきます。槍穂高連峰の玄関口上高地の小梨平キャンプ場は歩いて15分・明神のキャンプ場は2時間・横尾のキャンプ場も3時間・がんばって涸沢まで行っても6時間。

はじめは新緑や紅葉キャンプと経験を積んでいけば、テント泊で槍穂高も決して夢ではありません。千里も道も一歩から、一歩を踏み出して素晴らしいテント泊を楽しんでいただければ幸いです。

そして、こんなとこに行ったよ。これはどうすればいいのかな?どこかおすすめのテント泊が出来る山はない?とぜひ石井スポーツにお越しください。スタッフ一同お待ちしております。